作者が好き勝手やってる文字の掃き溜め
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ブログタイトル、ワールドエンドを嘯いて のカルエレのはなし。
無駄に長いです。
好きだとか愛しているだとか、それ以上に無意味な言葉って、ない。
これはおれたちに限ったことで、この世のすべてのそれらを否定するほど餓鬼じゃないし馬鹿じゃない。
けど、
おれたちにとってこれ以上に無意味な言葉ってないだろう?
ちいさな ちいさな 青い春
終わりを約束したの
もうすぐ死ぬあいつと、
治ってしまえば理由も無く、それに遠すぎてここにはもうこないであろうおれ。
おわりはすぐそこ。
馬鹿みたいだ。
餓鬼くせぇ。
わかってる。
わかってる。
それでも、
おまえを好きだし愛してるんだよ、おれ。
それでも、
*
病名とかは知らない。
わかるのは時折くる痛みだけ。
近所にでかい病院なんて大層なものはなくて、
一番近いでかい病院も原因特定にはいたらなかったらしい。
ひとのよさそうなじいさんセンセイが書いた紹介状をもって訪れたのがここだった。
それがはじまり。
器具の数も医師の数も技術も最高峰。
原因もわかり、手術とその経過を診るための入院。
ドラマのような話で、おれを産むのと引き換えのように母は息を引き取ったらしいから
親馬鹿で過保護な父は毎日来ようとしてくれたけど、
如何せんここは遠すぎた。それに唯一の稼ぎ頭が休んでどうすると納得させた。
退屈な毎日になりそうなのを分かっていたから、来てくれるのはありがたい。
けど、…小児科だと格好がつかないが、それで駄々をこねるほど餓鬼じゃあない。
それでも、父は週3は車を2時間ほど飛ばしてくるのだ。
それには勿論、感謝もしてるけど。
まぁ、そんな感じで退屈な入院生活は始まった。
手術がおわり、点滴という拘束器具から抜け出したおれは病院内を探索していた。
とにかく暇だった。
早く帰りたかった。それはまずい病院食が理由でもあったし、この単調な生活に嫌気が差したからでもあったし、父に負担を掛けたくないという思いからでもあった。
だからリハビリも頑張ってはいたけど、暇だった。
そんな、ちょっとした出来心。
患者が病院内を歩くこと自体は何の違和感もないらしく、
渡り廊下を進んでいつの間にか別の病棟に入っていた。
タイミングが良かったのか看護師も見当たらず、咎められもしなかった。
そこは、白かった。
小児科はキャラクターのポスターや看護師が描いた猫やら兎やらが病室にも張られているし、
大部屋はガラス越しに廊下が見えるから見通しがよく明るい。
それと比べると、いや比べるまでもなく白しかなかった。
寂しいところだった。
そこが死を待つ人々の終着点だと知ったのはその少し後のこと。
止めるものもいないからするすると中へ入っていく。
途中どの扉も閉まっていたがひとつだけあいていた。
そこも無視して奥へと進んでいく。
奥の部屋。
そこも扉があいていた。
と、看護師だろうか、少し遠くから足音が聞こえた。
おもわず、その部屋に入ってしまう。
「……っ!?」
「あっ、と…すいません」
そこにいたのは同い年くらいの少女だった。
蜂蜜色の髪が開け放たれた窓からそよぐ風になびいているのが目に焼きついた。
それが であい。
彼女は喋れないらしかった。
後天性のもので耳は至って健康らしく、会話のためにひっきりなしにペンを動かすのは彼女のみ。
おれは口を動かすだけ。
そんな、傍からみれば一方的な会話。
それでも空気は穏やかなもののはずなのに、いつの間にかおれらは喧嘩していた。
「だ、か、ら、ほんとにいるんだって!!」
『みたことないもん。しんじらんない。』
あいつもおれもヒートアップしていた。あいつの綺麗な文字が崩れてひらがなだけになる。
おれも言葉が荒く、思考は回らなくなっていた。
だからか。
「見に行きゃあいいだろ!退院したら!」
地雷を踏んだ。
その言葉にあいつはぴたりと止まった。
嵐が去るというよりは、凪いだような。急な静まり方におれはついていけなくて。
「ずっとここにいるんでもないだろ。」
それでも抱いた違和感に言葉を重ねる。
かさねて、しまった。
それはあいつの息をとめることばだったのに。
あいつはかぶりをふった。
ことばのない彼女の、否定。
『でれないよ』
『わたしは』
『ここで』
『しぬんだから』
大粒の涙で、震える手によって、歪んだ文字たちがおれを突き刺した。
そしておれはしった。
この白い空間が寂しいわけを。
*
ある日その日の担当看護師に見つかった。
癪だったから巻き込んでやった。
その後は知らないけど、病室に戻るときしあわせそうな顔をしていた。
いいことか、それとも。
あまり、そのことについては考えてなかった。
出会った日に喧嘩して、なんとか仲直り、というかおれが悪かったから謝って、
真実を知ってもあそこへ通い続けている。
父が来ると一日中いるから、週4のペースで。
多分、父は知っても止めなかったとは思う。
けど、
母で喪失を知っている父が止めない、という確証もなかったんだ。
だから、秘密はあの看護師とだけ。
月日は大して経っていなかった。
毎日のように会っていたから、昔からの友のように感じていたけど。
退院が決まった。
当日になってあいつにそれを告げる。
あいつは当たり前じゃん、と書き記した。
そう、当たり前。
おれは。
ついでに、とおれがあいつに告げようとした言葉を、
あいつは書き損じでぐしゃぐしゃにした紙くずを投げつけることで制止した。
多分、わかっていた。
おれがあいつをすきで
あいつがおれをすきだってこと。
そしてそれを言うのが凄く無意味だってこと。
「じゃあな。」
『じゃあね。』
多分わかっていた。
もう、会うことはないってこと。
お互いがこのあと、きっと泣くだろうということ。
ごめんな。
おまえに酷いこという。
「しぬな。あきらめんなよ。」
きっと、頑張って、それでも諦めなきゃいけなかった。
それなのに酷い、言葉だ。無意味な、言葉だ。
振り返りはしなかった。
*
おれもあいつも馬鹿だけど馬鹿じゃなかった。餓鬼だけど餓鬼じゃなかった。
それでも、
またおまえにあえるって、夢見るくらいに子供でいたかったよ。
あとがき
どうしようもないひとたちのどうしようもないはなし。
第四弾。
しぶに上げていたのは以上です。
中途半端に小児科の知識あるせいで蛇に足生えてる気が…
当時嘆いていたこと→病院ネタとして厳しいですが、誰か死んで感動、は正直嫌なんですよ。
だから、悪あがき(笑)でエレナ、まだ死んでません。
途中ベッタベタでしたね!しょっぱなから死亡フラグの乱立しとるし…
カルエレはまた続けるかもしれません。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
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