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「おつかれさん」

夜のバー開店に向け、ワインセラーから出てきたヴィノにかけられたのはそんな一言だった。
振り返るまでもなく声の主はわかるのだが、その声に応えるべく体ごとそちらへ向く。
やはりというか彼女の視界にはカウンターに肘をつき、こちらに向かって快活にわらう青年マクシミリアン―愛称マックスがいた。

「つってもあそこにいて疲れるなんてないだろうけどな。」

ヴィノがそちらを向いただけでよかったのか、元々反応など気にしていないのかマックスは言葉を続ける。
その言葉通りヴィノのテリトリーであるあの場所に何時間いようが、そこでどれだけ仕事しようが疲れる、という感覚はなかった。
それでも労いは嬉しいもので。
ヴィノは表情を緩めた。
―といってもあくまで本人比であり些細な変化なのだが。
そんな幽かな綻びにか、それとも空気の変化にか、マックスその人は気づいたようで満足げにわらった。
「俺の方も終わったし、新作カクテルの味、みてくんね？」
さてと、とマックスが言ったのはそんな頼み。
ヴィノはこくんと頷き椅子に腰掛ける。

滑らかな手捌きと小気味のいい音は見るものを惹きつける。
瞬く間にヴィノの前にグラスが置かれた。
濃紺から淡い青へと変わるグラデーション。
それは空を想わせた。

「ん、おいしい。」

快晴と夜を混ぜると幻想的なあおに変わる。
その過程すら楽しみながら一口、飲んでみる。
微炭酸が喉の奥で弾ける感覚と甘すぎない味。
自然、出てきたのはその言葉だった。

そんなヴィノの反応に人好きのする笑みで返すマックス。
「みて楽しめてのんで美味いってのが理想だろ？」

そんなマックスらしい言葉にヴィノは微笑みで返した。



I drink of sky!
（なんてありきたりで素敵な日）

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あとがき

カクテルのイメージはチャイナブルーです。あれおいしいよねって。
グレープフルーツいれようか迷ってやめました。
描写が空云々以上にこっぱずかしくなりそうだったんで。
タイトルのグラデーション汚くてすんません…(汗)
そして意味不や…

書いてる途中で「開店前に酒飲まないよなー」と気づいたのですが、
ヴィノちゃん強いだろうしいいよね！と開き直り、
「ワインとカクテルは分野的に違うよなー」と思ったので作中で言わせようと思ってたらタイミングを逃しました。
あとステアとか専門用語をwiki先生に教えていただいたので使いたかったのですが、
これまた使うタイミングを逃しました。


……うん、ろこさんごめん。
Last Order?の子達への愛とお祝いの気持ちだけは沢山詰めました。
ﾟ+.((ヽ(・ω・)ﾉ))ﾟ+.ﾟ
ほんとにおめでとう！





以下おまけです。



おまけ

「何あのリア充。何あのリア充…っ！」
自分で綺麗にメイキングしたテーブルに突っ伏してじと目で二人を見る男がひとり。
ウェイター、ディスコ・オースティンそのひとである。
腕に半分顔をうずめているせいでくぐもった声が呪詛の如く出ている。
いつものようにイレルにいびられたのでマックスに愚痴りに行こうとしたのだが、
当の本人はヴィノと談笑中で。
それでも普段から一緒にいることが多い二人だったから気にせず行こうとしたのだ。
だが。
いくらKOH、ならぬKOKY(壊滅的に驚くほど空気読めない)も甘酸っぱい空気には人一倍敏感である。
だからディスコは気づいた。気づいてしまった。
このまま行ったら馬に蹴られて挙げ句泣く羽目になると。
結局行かないなら行かないで勝手にダメージ受けているのだが、そこは突っ込んでは駄目―寧ろ突っ込まないでくださいお願いします、なのである。

「うわーn「五月蝿ぇ仕事しやがれ。」

そんな嘆きも明らかに不機嫌な声と後頭部へのダメージで強制終了。
声の主も攻撃の犯人も勿論ジュンであり、痛む箇所を押さえて振り返ったディスコの視界にはしっかりとおたまが握られているのを捉えていた。

「仕事は終わったもん！
憐れな俺に慈悲をくれたっていいじゃん！」

「……お前、自分で憐れんで悲しくならねぇか……？」

悲しい哉、殴られるのはいつものことで。そのせいか文句はそこではなく、いくらかズレた独身男性の叫びが飛び出す。
流石のジュンもいささかディスコの欲するものとは違う憐憫の眼差しを寄越した。
そんなジュンにディスコはうるさいリア充と泣き、また凶器(と書いておたまと読む)でしたたかに殴られるのはこの数秒後の話である。
そしてリターナに慰められ、嬉しさのあまり抱きつきまたジュンに殴られるのは数分後の話である。


「なにはともあれVasilicoは今日も平和である。」

「店長、平和じゃないから！俺の心平和じゃないから！」

「さ、開店すっぞ！」

「店長ぉぉぉぉぉぉぉ！！！」

おわれ！



…おまけのが長くね？

全員出せてよかったー(*´∀｀*)…名前だけの子もいるけど

それではここまで読んでいただきありがとうございました！